前回の記事を書いている頃は、窓の外に目をやると満開の桜が咲き乱れていました。2本目を書いている今はすでに桜は散り始め、木々に青々とした葉が生え始めています。
思えばPRESSoの開発が始まったのは去年の今ごろ。当時はまだ具体的なアイデアさえもなかった製品が、1年後の今では1000人以上の手に渡って使われていると思うととても感慨深い気持ちになります。
さて、前回の連載では開発した2人の想像以上にPRESSoが多様な使われ方をしてること。そしていろんなニーズに応えるためにPRESSoのオプションパーツを考えられないかというところまでお話ししました。
今回はそのオプションパーツに関して、製品企画の一部始終と、メンバー同士で合意したアイデアを元に制作したプロトタイプをご紹介します。
行ったり来たりを繰り返したりしながら考えた、PRESSo的発想のオプションパーツの“素”が誕生しました。
コインポケットを自由にする
前回お話ししたように、PRESSoの使い方でもっとも個性が出たのが中央のコインポケット。
小銭を入れたり鍵を入れたり、人によっては領収書やSIMピンを入れている人まで。いろんなものを収納できるポケットですが、収納量的にも入れられるものは1つだけ。
例えばコインポケットに小銭を入れている人だと鍵は収納できないし、その逆もまた然り。
「コインポケットが担っている役割をオプションパーツとして切り出せば、PRESSoの可能性はもっと広がるはず」そんなテーマで企画会議が始まりました。
堀口「決済をキャッシュレスで済ませても、領収書は紙でもらうことも多いから、マネークリップならぬ領収書クリップはどうかな」
平岡「こんな感じで鍵のヘッドカバー 兼 小銭入れはどう?2つの物を一緒に収納できるようになるよ」
堀口「やっぱりストレートに小銭入れがいいかもね。とにかく小さい小銭入れってどう?折ればお札もギリ入るサイズ感」
平岡「小銭入れいいね。Lファスみたいなシンプルで小さい小銭入れ。」
ここで紹介していないものを含め、挙がったアイデアはざっと10個ほど。出た意見を元に1つ1つ細部のディテールを検討していき、最後は小銭入れというところに落ち着きました。
小銭入れにおける“最小サイズ”の意味
PRESSoのオプションパーツとして作るなら、使う素材はやっぱり熟成レザー。革見本市を探し回って見つけた特別な皮革素材は、購入者の中にもファンが多くdripもお気に入り。
今回も製作にPRAIRIEさんの協力を経て、細かな縫製仕様などを詰めてサンプル製作の準備に入ります。ただ、いざサンプルを作るという段階で2人の間に疑問が生まれます。
それはPRESSoシリーズのPRESSoらしさについて。
PRESSoはキャッシュレス時代を見据えて、財布の形をカードとほぼ同等サイズまで削り、考えうる“最小サイズ”を実現しました。
キャッシュレス時代の主役は当面クレジットカード。だからこそ否定的な意見を承知の上でお札を3つ折りにしてでも、財布をクレジットカードのサイズに合わせました。
では今回はどうか。小銭入れにおける“最小サイズ”の基準は、間違いなく硬貨のサイズ。
でも今作ろうとしている小銭入れは、硬貨よりひとまわり以上大きくしてお札も収納できるようにしようというもの。
「小銭入れにお札も入ったら便利なのは確かだけど、それはPRESSoの思想とは違うよね。」
「使いやすさや汎用性は減っちゃうけど、小銭入れも“最小サイズ”というコンセプトを追求しよう」
こうした話し合いの末、これまで考えていた形から急遽図面を引き直し、より無駄を削ぎ落としミニマルさを強調した小銭入れを開発する方向性に軌道修正。
急な変更で開発に携わっていただいている方々に無理をいうことなってしまいましたが、品質には妥協できません。
かくしてPRESSoの思想を引き継いだ、小銭を入れるためだけの“最小の小銭入れ”の概要が固まりました。
サンプル製作に着手
作りたいものが自分たちの中で固まったら、ここからはPRAIRIEさんや職人さんの手を借りてサンプルの製作に着手。
- 小さくても安っぽくならない、曲線のアールの角度
- 小銭の収納力を持たせる縫製方法
- 薄さを犠牲にしない留め具の選び方
PRAIRIEさんにはこれまでの製品企画の経験をもとに、ぼくらのアイデアを具体的なディテールに落とし込むヒントをいただきました。
そして図面が完成したらいよいよ職人さんにサンプル製作を発注。実際に裁断や縫製をする中で、耐久性リスクなどを細かに確認しながら最終仕様を決めていきます。
耐久性・安全性・デザイン性・利便性など、あらゆる観点からみた最適な仕様を1つ1つ決めていく。そしてこんなサンプル製作を、自分たちが納得できる仕上がりになるまで何度も繰り返していきます。
複数回のサンプル製作を経て、ようやく自分たちが納得のいくプロトタイプの原型が固まってきました。
コンセプトは硬貨サイズ、そして薄さを追求したシンプルな小銭入れ。持っているのを忘れてしまうほどの、最小サイズというPRESSoの思想を持ったオプションパーツです。
PRESSoの製作時も感じましたが、ものづくりというのは想像している以上にずっと細かくて難しくて奥深いもの。作ってはやり直してを繰り返していると、先の見えない濃霧の中を歩いているような感覚に襲われることもあります。
それでもこうやって自分たちの頭の中にあったアイデアが、実際の形になる瞬間は本当に嬉しいもの。
この記事を書いている今は、ちょうど最終サンプルが上がってくるのを待っているところ。次の記事ではみなさんにサンプルをお見せできると思います。
春。PRESSoにも少しの遊び心を
きっと見たら驚くくらい小さい小銭入れです
具体的な形が決まり、製品化まであと少し。
良いものができそうな予感にポカポカとした春の陽気も手伝って、私たちはPRESSoに少しの遊び心を加えることにしました。それがPRESSoの期間限定カラー。
小さく可愛い小銭入れ。熟成レザーだけでなく、もっと春らしく可愛らしい色合いのバリエーションを作りたいねという話になり、それならいっそ同じ革でPRESSoの期間限定カラーを作ることに。
次回の連載では新たに企画した小銭入れのネーミング、そしてPRESSoの期間限定カラーなどをご紹介したいと思います。お楽しみに!
前回の連載記事はこちら:PRESSoをもっとあなたらしく。オプションパーツの可能性を考える